[a sea bream] ごめんねごめんね 2006年04月12日09:06
経理の不正を行っていた重臣の一人、ヴァンガードを捕らえ、
急いで戻った大広間はひどい有り様となっていた。
大砲の弾で横の壁が崩れたのは分るとして、何故天井までも穴が開いているのか。
崩れた天井の瓦礫の下に何故鯛とDeL嬢が居るのか。
何故鯛があんなに血を・・・
呆然としてぐるぐると回る思考と別に、戦闘中の状況把握をする頭は無意識に働く。
ヴァンガードは俺が抵抗できない程に抑えてある。
彼の呼び出したホッグキャノンも破壊した。
マグライダーも縛られ、泡を吹いて倒れている。
プラウラーは、ちゃっかりと城側の人間として取り入った様子。
衛兵もヴァヌーテラン王女と国王に従って動いている。
もう敵という存在はない。
Geyさんは周りの状況を見渡し、鯛とDeL嬢を見た後に王女と何かを語っている。無事だ。
DeL嬢は・・・鯛の名を呼びながら泣いている。戦闘で受けた傷はあるようだが特にひどい重症は負っていないようだ。一応無事だ。
・・・おおとりさまの姿が見えない?
何故だ。この場に居る気配がまったくない・・・
瓦礫の撤廃の手伝いをするおおとり軍団の人は数人居るが、本人は居ない・・・
しかし軍団員が普通に動いている以上、おおとりさまの無事は確かだろう・・・。
全ての敵は倒されて、味方は無事・・・一人を除いて。
うぅうぅぅぅ・・・
一連の騒動が片付き、戦闘から抜け出して気を抜くと一気に冷静さが吹き飛んだ。
鯛が・・・うちの盟主が、俺の雇い主が、血を沢山流して倒れているようーー
わんわんと泣きながらもバトルヒールをありったけの精霊力を込めて放ち続ける。
威力が弱いのも、救護班が居るのも分っているけれど、
何か出来る事を何か一つでもし続けていたかった。
えぇーーんえーーん
DeL嬢がしくしくと泣く横で人目もはばからず大泣き。
大人だけれど、男だけれど、悲しくて仕方なくて涙が止まらないんだもの。
悲しいんだもの。
救護班の女性が心配して声をかけてきた。
「大丈夫ですよ、命に別状はございません 。
もしも最悪の自体になったとしても、我が城には優秀なビショップがおりますので
良いリザレクションが受けられますよ。」
慰めてくれているのだろうけれど、そんな事が問題じゃないんだ。
傷を癒したって、痛みを負った時の苦しみはその時確かにあったわけで。
俺はそんな痛みから守る事が出来なかったわけで。
その事が悲しくて悔しくて、泣いても泣いても悔やみきれない。
あの時砲台を真っ先に壊していたら。
ヴァンガードの召喚を止めていたら。
側を離れなければ。
こんな騒ぎに巻き込まれなければ。
どんどんと後悔が記憶を辿り、巡ってゆく。
ヴァンガードの奴があんなもの呼び出さなければ。
重臣どもが不正流用とかしなければ。
あいつらが鯛を勝手に婿とかにしなければ。
普段は後悔しても己の力の無さを悔やむだけだけれど
今回は事が事だけに怒りが、悲しみが、自分へだけでは収まらない。
大体何で鯛が婿なんだよ。
鮎の奴が絡んでたらしいがアイツどこ行ったんだよ。
おおとりさまはアイツを追って来ただけなのかもしれないけど、
こんな事態になってるのに居ないってどうなのよ。
普段は人のせいにするのは己の未熟故と思っているのに。
なのに怒りを他にぶつけてしまっている。止まらない。
でも一番止まらないのはやっぱり涙で。
救護班の人の治癒の邪魔になってはいけないと思いつつも、
手に触れて体温がある事を感じていないと不安で仕方がなかった。
俺が大砲止められていれば
ごめんねごめんね
そう言いながらもDeL嬢と共にしきりに泣いていると、ふと手が動いた。
気が付いた・・・? |