− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] MOUROKU  2006年03月10日23:22

「鯛さんwwwwwwっうぇwwwwwww」

「あ、潤」

マナーの本を探そうと書店に入ろうとしたところで、
バイオ戦s……いや、同盟員のトレジャーハンター、“曹潤”に声をかけられた
手を振りながら歩み寄ると、腰をかがめてぼくの目を覗き込む

「おー、大丈夫ー?」

入院のことかな?

「鯛さん、こないだギランで
スリープかけられてるっぽいの見たからさぁ」

「……え? スリープ?」

「その後入院したって聞いて、何かあったのかと心配してた
回廊で倒れてたんだって?」

意外な話題だ
ギランでスリープ、その後に入院……どういうこと?

兄貴に遭ったあと、アデンに行く前にもう一度死の回廊を調べて回ったけれど
結局“痕跡”は見つからなかった

身に覚えのない「死の回廊」、そして「スリープ」……

「潤、ぼくはその後どうなった?」

思わず尋ね返した
潤はちょっときょとんとした顔をしていたけど、
やがて首を小刻みに横に振る

「いや、帝国墓地の探索に呼ばれて急いでてさ、
走ってる途中遠目に見えただけで……確信なくてさ
わりい、あのとき助けてりゃ良かったな」

「いやいや、急いでいたなら仕方ないさ」

答えながら、なんだか府に落ちない気分で考え続けていた
そういえば、あの時ギランでGeymarkとロキを見かけて、
その後強烈な眠気を感じた気はする……

潤は職業柄視力が抜群に良い
見間違えるなんてことはめったにないと思う

……スリープ、か……
ぼくに向かって街中でそんなもの使う人と言ったら……

ふと潤を見ると、先ほどよりちょっぴりそわそわしている
今日もこれから傲慢の塔か帝国墓地の探索があるのだろう
今度時間がある時ゆっくり聞こう、気になる話だ

「ああ、ごめんね引き止めちゃって」

「ごめん鯛さん、俺今日も墓地行かないといけないんだ
体に気をつけてね、うっかり道端で寝て風邪とかひかないようにねぇ」

「潤こそ、無事で」

 

テーブルマナーの本は見つけた
貧乏なので、立ち読みで余すことなく全文を把握
なんだかいろいろめんどくさそうだったなぁ
練習する時間もないけど、なんとかなるだろう……

さて、日も暮れていい時間になってきたし
礼服職人ガルナさんの所に戻ろう

 

「おう、おう、出来ておるよ!!
いやぁ、久々に傑作じゃ、わしの腕も衰えてはおらんの」

ガルナさんを尋ねるなり、
すがすがしく、かつ揚々とした表情で迎えられた
一仕事終えた男の顔って感じでいいなぁ

ガルナさんは少しくたびれた皮袋をぼくに差し出した

「これを着れば、
グルーディオの上流階級の者たちの目を引きまくるじゃろう
楽しみじゃな」

「はい、レイカさんの師匠さま直々に手がけた礼服というだけでも
かなりの価値を感じます、本当にありがとう」

「うむうむ、頑張れよお嬢さん」

……ちょ

今物凄い嫌な予感が

二度目だよ? それ……

「さて、わしは一仕事終えたあとの極上の一服を味わうとするか
では、またな」

「……あの、失礼ですが、一つお伺いしたいことが」

「なんじゃね?」

「今日ぼ……私が何時に尋ねてきたか、覚えてます?」

「ん〜……6時間前かの?」

違う

違うよ

2時間前だよ!!

 

その場でつっこみたかったが、
ガルナさんが引退した理由が分かった気がしたので、それは出来なかった
つっこんでどうこうなるもんじゃない……
ひとまず礼を言ってすぐに立ち去った
アデンの南門の立ち木の陰に隠れ、すぐに渡されたものの中身を確認する

 

「あ の じ ー さ ん !!」

 

中から出てきたのは、純白のシルクのドレスだった
ご丁寧に、靴までパンプスに変わってる……



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