− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] 手段  2006年03月11日19:26

うーん、変な汗をかいてしまった……

最悪NMローブで出席かなぁ
でも一週間くらい前に火鉢探索行った時に
だいぶ焼かれてあちこち焦げてる
修繕とクリーニングは間に合いそうにない

ごまかしようがない……
ここは、ぼくと体型が似た人から礼服を借りるのがいいかな

などと考えていると、立ち木のそばをエルフの男が二人、
なにやら話をしながら通りかかった

「……モア竜神会の盟主のどこがいいんだか……」

「お金持ってそうにないよな、あの人」

「グル城主の婿になったら変わるぜ?
逆玉ってやつよ」

……これは……
ぼくは息をひそめ、耳を澄ましながら二人が通り過ぎるのを待った

「なんて名前だっけ、あの盟主」

「鯛の塩焼きだっけ?」

「鯛の姿煮? ……なんかそんな名前だな」

声は次第に遠くなり、やがて聞こえなくなった

さっきとは違う嫌な汗が噴出する
竜神会という名前の血盟は、このアデン大陸には一つしかない

お金を持ってなさそうに見える……というか
実際お金はそれほど持ってないのはあってる

名前も、聞き間違えとしても類似しすぎてる

グルーディオ城主、何を考えている……?
たしかあの城主の娘“テラン”さんは今度の祝賀会で成人する
上流階級の人たちは、成人する日に婚約したことを
パーティなどで公表する風習がある

さっきの人たちの話がたとえただの噂話であっても、
そんなネタが噂として立つこと自体不自然だ

ぼくはある事情で、
女性とのお付き合いはおろか、結婚なんか出来ない身なのに

……ちょっと、のほほんとしていられなさそうだな
兄貴、グルーディオ城主に何をした?

 

策を考えながら、ひとまずギランに戻ろうと
南門へと走り出したその時

一羽の黒い鳥がぼくの視界を横切った

こいつ、ロキの郵便用の召喚獣だ
んん?小さい包みを持ってる
可哀想に、ちょっと重たいだろコレ

手の平を空に向けて差し出すと、包みをぽんと手のひらに落とし
すぐに飛び去って言った

なんだろう?
ぼくはさっそく開封した

……
…………
……………………

光の当たる角度を変えると紫に輝く、蘭を象った漆黒の……

ヘアピン

な……何を考えてるんだロキ、
ぼくに女性用のアクセサリを送るなんて
根拠がまったく分からないんだけど……

どいつもこいつもどうして……

くらくらとめまいを覚え始めたが、
同時にはたと思いついた

 

これ、使えるや

 

もう一度本屋に戻って女性誌を速読しよう
怪しまれないようにしなきゃな、丸暗記の所要時間は3分だ



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