− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] 聞き逃したルール  2006年03月16日19:58

ロキがちゃんと仕事をこなしてきた
珍しく手際が良い

 

さてさてお着替え、と……

 

結構長いウィッグだなぁ
しかも微妙に頭のサイズが違うらしくて
アップに出来ない

メイドは髪の毛だらしなくできないよなぁ
トップは強引にヘアピンで固定するとして……
カーズドナイフの先を使って長さを調整っと

「……何見てんのロキ」

「いや……なんでそんなに手際がいいのかなと……」

「そりゃぁ勉強したもん、本屋で3分ほど」

 

 

ロキは別行動へ、
ぼくはGeymarkもしくはテラン様に近付くべく
メイドっぽい仕事をしながら少しずつ壇上の方へと移動する

当面バレないだろうと思ってた

ところが、ぼくは重要な情報を聞き逃していた

 

「私が鯛様じゃないかって?
違いますって!」

「いやいや、そのお美しいヘアピン見覚えがあります
鯛の姿焼きさんがうちのお店で買ったんですよ」

「え? でも私は違います
違うっていってるでしょ」

 

DeLPiの声だ!

もう一人知り合いがいたのか……
大広間を歩き回ったロキなら気付きそうなものだけど
まさか彼女がいるとは

うわー、うわー、セクシーな礼服……

ってそれどころじゃない

ぼくは、間髪いれず耳に入ってきた会話に青ざめた

「うーん、鯛さんはどんなヘアピンをしていらっしゃるんだろう」

「コレではないとすると……あ、あの貴婦人のは?……
い、いや体格が違いすぎるな」

 

まさか!

 

急いで外そうと頭に手をやろうとして、思い留まった
そうか、Geymarkが一緒ということは
ぼくがどんな姿をしているか、
今やこの祭りを開催したテラン様もご存知なわけで……

「鯛の姿焼きを見つけ出して、彼の身に付けているヘアピンを
テラン様の元に持ってきた者にご褒美」

ってこと!?

ひ、ひどいよGeymark!
ぼくに捕まれって言ってるようなもんじゃないか!
何故そこで嘘をつかない?!

しまった……いつ聞き逃したんだ
ロキはメイドのままに、ぼくが男の礼服を着れば
こんなことには……

ヘアピンを外したらウィッグの固定が緩む、
今外すのはヤバい

「メイドさん、シャンパン頂いてよろしいかしら?」

「あ、はいどうぞ」

営業用スマイルも引きつる
DeLPiなら手を貸してくれそうだし、話がしたかった
でもだめだ、
彼女の周囲にはヘアピンしか見ていない人間の山、山

ひとまずここを離れて、早いところテラン様のところに……

 

まだ「メイドに化けているのではないか」と考える人はいないのか
声をかけてくる輩は今のところいなかった

このまま厨房に下がって、テラン様にお持ちする飲み物を……
と足を速めた時、「偉い人オーラ」を放つ男に行く手を阻まれた

「おや、メイドさん
綺麗なヘアピンを身に付けていらっしゃいますね」

体格の良いヒューマンの男
知らないヤツだが、
会ってはいけない人物に遭遇してしまったかもしれない……
気配で危機を感じ取ったのか、警報のごとく全身に緊張が走る

同時に、後方で紙を裂くような悲鳴が上がる

「ひ、人殺し!!」



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