− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] 重臣プラウラー  2006年03月17日20:22

後ろの方で何か騒ぎが起こっている
それを見ていたテラン様の傍らにいるGeymarkが
なにやらアナウンスを始めた

この男さえ現れなきゃ、いつもクラハンでするように
音や声で何が起きてるか把握していただろうに

残念ながら今は、この政治っ気ある腹黒さを漂わせる男の前に、
すべての音が情報ではなくただの環境音に変わってしまっている

「どれ、顔をよく見せてみたまえ」

ヒューマンの男は、ニヤついたいやらしい顔をぼくに近付けて来た
こ、これは勘付かれている……かもな

うぁ、変な手つきで顎に触ろうとすんな、きもちわる!!

ぼくって、こういう時どうしてろくな手段思いつかないんだろう
「もう盟主としてやっていけないかも」
などと心の中で半泣きになりながら、思いっきり腹に力を込めた

「ひどい! 急にそんなこと言われても納得が行きません
二時間後に貴方の自室にお伺いするって
お約束したではありませんか……!!」

わざと抱きついて、人に聞こえるように叫んでみた

「な、何を、おま
は、離れろコラ!!」

男はぼくを引き離そうとしたけど、
強引に胸に顔をうずめてみる

「ぷ、プラウラー様……そのメイドさんは……?
まさか、昨日の羨ましい話の女(ひと)ですかっ?」

男の後ろから、これまた腹黒オーラをぷんぷんさせた
メイジと思しき若いヒューマンが話しかけてきた

プラウラー……なんか聞いたことあるぞ
エルフ村のハーブティエンを訪ねる途中で聞いた
グルーディオ城主の噂――その中で何回か出てきた名前だ

記憶違いでなければ……確か重臣の一人じゃなかったっけ
「間接的ではあるが“ぎょうしゃ”とつながってる」とか
変な噂あったな

ここは逃げておいたほうが良さそうだ
ぼくはすっと息を吸い込み、

「所詮私は話せる島の田舎娘……
あの夜のことは遊びだったのね……!!
ひどいわプラウラー様!!!!!!」

叫びながら胸を突き飛ばして泣くふりをしながら走り出した

周囲から見りゃちょっとしたスキャンダルだよな
ぼくよりもプラウラー殿が注目されている気配だ
よし、このまま厨房に突っ走ろう!

 

「お、おい! まて!!」

「プラウラー様……相変わらず遊び好きですなぁ
貴族の娘ならまだしも、なぜあんな田舎娘を
見境というものをご存知ないのですかな、はっはっは」

「違う!! あれはまったく知らん女だ!!」

「またまたそんな! 何人目の女なんですかい?」

「おい!! 衛兵!! 衛兵はおらぬか!!
俺に盾をよこせ、あのメイドは……」

「だめですよ、シールドスタンは座興ルールに反しますよ?」

「馬鹿野郎!! 不審者だ、不審者だと言っている



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