− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] おおとりさまが爆発  2006年03月23日16:43

「たった今厨房で爆発があったんです、ここは危険なので……」

ぼくは必死で他人を装いながら現状を説明しようとした
ところがGeymarkは目を逸らして深いため息をつく
うう、今はそんなの気にかけてる場合じゃない

「テラン様も早く逃げてください!
ここもいつ爆発が起こるか……」

……そう言いかけたとき、気付いた

しまった、声が!

声の薬が切れている……さっきの騒ぎに気を取られてて
効果時間のことを忘れていた

そこに追い討ちをかけるように、
Geymarkがぼくをキッと睨みながら言う

「メイドさん」

「は、はい」

「よくそのままでバレませんでしたわね……」

「何が?」

「ドレスからただメイド服に着替えただけでは、
変装にはなりませんわよ」

「はい?」

何の事か分からなかった
いや、ちょっと危ないこともあったけど
今の今までバレなかったよ?

と言おうとして違和感に気付く
慌てて頭に手をやった

 

ああ! ウィッグがないー!!

 

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現在の鯛の姿焼き:ウィッグなしメイド服
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あああああああああああああああああああああああああああ
もしかして、厨房の爆発で吹っ飛ばされた?!

「そんなすすだらけの顔して
化粧落ちてますわよ……」

「あー……」

ぼくは肩を落とした
あんなに苦労して捕まるのを避けてきたのに
ここに来て変装の意味がなくなるとはー……

「ふふふ、面白い方ですのね」

テラン様が澄んだ高い声で笑いをもらした
くっそ、

超、

 

超恥ずかしい

 

けどもうそんなこと気にしてられないよ
爆発があったんだから早くここを離れないと

大広間を見ると、右往左往する警備兵、そして
動けなくなっている客人たち、給仕やメイド
ここでも爆発があったんだろうか?

半分以上の人間は既に外に出てしまったのだろう、
扉にたかり、外に出ようとしているのが残りの1/3といったところだ

……あ、あれは?

礼服を着たダークエルフの男が一台のテーブルをずるずると移動させ、
椅子をテーブルとは逆向きに配置する

赤いドレスのエルフが椅子に足を乗せたかと思うと、
ひらりとテーブルの上に乗り上がった

「はーい、皆さん注目ーー」

お、おおとりさまだ
随分派手なドレスに着替えたなぁ……何でまた……
あのダークエルフは、ロキだな

「あらあら、何をする気かしらね」

Geyが腕組みをしながら言う

おおとりさま、今度は何をしようと……演説でもする気?
彼女の高く通る声に、
阿鼻叫喚となっていた広間内は、少しだけ静かになった

「あたくしは今ちょーーーーっとだけ機嫌がよろしくありませんの」

まぁ、その原因はなんとなく分かる
でもぼくに悪意は……

「それは、なぜか

愛しのダーリンが見つからない

かっこいい殿方に逃げられる

盟主は女装が趣味だということが分った

盟主の関係者と言うことで警備兵にからまれた」

 

ちょ!!!!!!!!!!!!!!!!111

女装が趣味とかこんなところで公言する!?

 

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現在の鯛の姿焼き:ウィッグなしメイド服
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「ほら、鯛ちゃんも何か言いたい事があるなら、
発言を許可いたしますわ」

 

「やはり、あなたが鯛の姿焼き様でしたか」

ぼくの後ろでテラン様がぽつりと言う
こ、この清楚なエルフのお嬢さんにまで
女装趣味みたいな印象を……

「ちょっとおおとりさま!!
誤解を招くような言い方やめてくんない!?」

我慢出来なくて叫んでしまった
ふと、大広間が静まりすべての人間がぼくの方を見た
構わず続ける

「何勘違いしてんだよ、
女装が趣味なわけないだろ?!」

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現在の鯛の姿焼き:ウィッグなしメイド服
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……自分で言ってて泣きたくなってきた

「ならその格好は一体なんのおつもり?
まったく、白いドレスをお召しになったり
メイド服をお召しになったり
ダーリンの弟がそんな崇高な趣味をお持ちの方とは」

「ドレスのことは説明が面倒だ
でもメイド服は想定外だよ!!
誰がこんな目に合わせてると……」

「だいたい、ロキにまで本気のメイド服を着させるとは
組長! あなたはギランでメイド喫茶の経営展開でも
するおつもりなのかしらー?!」

大広間の人々が、おおとりさまの指差した先にいるダークエルフ
一見紳士っぽく見える礼服姿のロキを一斉に注目した



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