− 鯛の姿焼き編
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[a sea bream] vsマグライダー  2006年03月30日13:22

……結局おおとりさまの条件を飲むことになってしまった
これも同盟のため……
いや、実際ぼくは「意図した邪魔」なんかしてない
ただ、おおとりさまから逃げようとする兄貴の気持ちも
分からないでもなく……

 

ん?

おおとりさまから逃げる?

 

いや……考えすぎかも?

確信持てるまでは曖昧にしておこう

で、ええと……
なんだか変な防具を一瞬着させられた気がするけど気のせいだろう

ぼくはおおとりさまの影から装備を受け取り、
すぐにNMローブと二刀加工されたクシャンベルクを装備した
着替えている間重臣らしきダークエルフの男がニヤニヤこちらを
見ていたのは多分気のせい、気のせい……

装備を整えて剣を抜くと、

“ズゥン!!!!”

城の壁が大きく振動した
同時に、次元の門から現れたと見られる巨大兵器が
壁や天井を突き破って姿を現した

で、でか!!!!!

これがワイルドホッグキャノンか
戦争に参戦したことがないから、初めて見る……
こんなの、ぼくらだけで相手出来るの?!

おおとりさまは……あれ?どこいった
ふう、やっぱり傍観、かなぁ……

仕方ない……暫くはまた“寝たきり”になるけど、使うしかない
ああ、やだなぁ、今から想像しただけでも嫌だ
結構辛いんだよなぁ、3日くらい……
でも相手が力技で来る以上、正当防衛だよね
自分の命はもちろん、事の発端とは無関係の人々に
“死”という不快感を味わってほしくない

ひとまずヴァヌー様たちに被害が及んではいけない
ぼくは出来れば生き延びたいけど、
最低限彼らには逃げてもらわないと……

振り返り、ヴァヌー城主のもとに駆けつけようと足を踏み出す

しかし、次の瞬間にはすべての動作を抑えなければならなくなった

「鯛様! 逃げてください!!」

テラン様が悲痛な声で叫んだ
いつの間に……
見ると、警備兵に羽交い絞めにされるように捕らわれている

ヴァヌー城主は膝をついたまま動かない
よく目を凝らしてみると、ヴァヌー城主の全身にスリープ系の魔法の
白く鈍い光がくらくらと舞っている

「エルモア竜神会盟主、ヴァヌー様とともに散るがいいわ!」

ダークエルフの重臣、マグライダーが
ぼくにソードオブヴァルハラを向けて叫んだ
よく見ると、ナイトメアローブを装っている

スペルハウラーか?

くそ、ホッグキャノンの動きを止めなきゃいけないのに
あああ、間髪いれずハリケーンなんざ撃って来たし!!!

激しい突風が体を通過したかと思うと、
無数の目に見えぬ真空の刃がぼくの体を刻んでいく

ホッグキャノンのほうはロキが何とかしてくれてると思おう……
彼は緊急時はやたら機転がきくし
もしかしたら戦争に詳しいDeLPiと一緒かも……?

いや、希望的観測に過ぎないけど

今は希望が欲しい

「うーん、勝てるかなぁ……困った
テラン様、あんまり見ないでね」

ぼくは苦笑いしながら言った
戦事にはあまり関わりのなさそうなお嬢様だもん、
血は、出来る事なら見たくないよね?

ぼくだって人相手に……ちょっと気が進まないけど
“真剣に対人戦に挑むには、これしかない”んだ

 

えいやっ

 

「さっきから気になっているんだが、それは何なのだ?
バーサーカースピリッツのような禍々しい光は……」

マグライダーは比較的落ち着いた様子で聞いてきた

「こちらも聞きたい事がある……
答えてくえたら、教えてあげてもいいかな」

ぼくが自分にエンチャントを施そうとするのを阻止しようと
警備兵たちが駆け寄ってくる
でも、遅いよ

 

すべての動きが、遅い

 

意志が何かに飲み込まれそうになる
刃に刻まれる痛みも、血のざわめきとともに消えていった

何もかもがごく当たり前のように
警備兵たちの首に斬撃の一筋が刻まれていく

“血”と共存しようと立つ最低限の自我をもって、冷静に、淡々と、
自分自身に願う

“殺すのは、NGね”



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