[a sea bream] 恐怖の言葉とビジョンと 2006年03月14日18:41
……如何に大きな噂になっていたか、今更ながらに実感する
何でロキやGeymarkもいるんだ……?!
事が事だけに、同盟員には明かさないでここまで来たのに
おおとりさま、Geymark、そしてロキ……
ロキ……
ロキが一番何考えてるのか分かんない、
分かんないよ何アレ……
給仕ならまだ、なんであんな……
せめてこう、首元を隠すとかしないと
時間の問題な気がするんだけど……?!
って人のことばかり言ってられない
あの3人の中で一番危険なのはおおとりさまだ
ぼくのことを「兄貴を隠している目の上のタンコブ」だと思ってる以上、
このまま黙っていてくれる可能性は――
……いや、血盟員である彼女を信じよう
彼女だって、ぼくがグルーディオ城主と深い関係を結んでしまったら
血盟や同盟にどういう影響があるか、察してくれてるはず……
城主との間に大きな亀裂が生じた場合も、同様だ
それにしても、Geymarkが何故ここにいるのかわからない
頭の切れる人だから、暗号的な挨拶をしたかったけど
急いでいたのかすぐに立ち去ってしまった
どうしよう、わずかなチャンスすらない……
どうしたものか、と
ロキのトレーから頂戴したシャンパンを一口、
一呼吸置いてみる
その時だった
「……竜神会の……主……女装……」
「本当ですの……?」
「テラン様のご趣味……?……を疑いますわ……」
「女装だなんて……どこに……のかしら……」
思わずシャンパンを吹きそうになった
同時に、全身の血がざっと引く
んー……つまり信じたぼくがお人よし過ぎたってことかな?
バレることは想定内だったけど、こうも早々に……ふぅ
このままじゃ悔しいな
情報収集もままならないままとは
まだ、ぼくとテラン様が婚約するという確かな噂や情報を
しっかり聞いていないのに
まぁでも、影がこれだけいて
主賓がまだ現れないところを見ると……
婚約に関してはそれで充分か
理由は未だ不明だけど
焦らずシャンパンを喉に流し込んでいるうち、
影たちの動きが変わった
ぼくの知り合いを探すのではなく
貴婦人たちを尋ねて情報収集するようになってる
悪いけど君たちには捕獲失敗してもらうよ
右の二の腕を掴んで親指を押し込む
中に仕込んだカーズドダガーの革ベルトがはずれ、
ダガーが重みで落ちてくる
袖の長いドレスでよかった、柄を受け止めても外からは見えない
さて……
影が2人、貴婦人が3人、と
ぼくは彼らにつかつかと歩み寄った
「ええ、なんでも女装してるとか……驚きですわ
テラン様のご婚約のお相手とお聞きしてたものですから
楽しみにしてましたのに、何故女装が趣味の方と……」
「情報ありがとうございます、
それらしい方を見たら即私どもに……」
背後から静かに近付き、すっと息を吸い込む
なるべく小さな動作で、小声で……
<汝らの精神(こころ) 其に映し出さるるは真――
おおとりさまが寄せて上げて特注のCカップぬーぶらを装備して
頑張ってるところをあなたは見てしまいましたし、
発見されてしまいました残念
この幻覚は部屋の灯りを消して大音量でお楽しみください>
「!!!!!!!!!!!!????!」
あら、全員に成功しちゃった「ワード・オブ・フィアー」
影の魔法抵抗力、大したことないな……
どんなもの見ちゃったのか気になるけど
ぼくの生み出したビジョンそのままなら
恐ろしい事になってるはずだ
5人は、ぼくの言霊とイマジネーションが生み出した幻覚幻聴に
震え上がり、やがて畏怖に満ちた表情で
壁際まですっとぶ勢いで走り出した
ワードオブフィアーの幻覚幻聴の題材はまぁ、作戦もあるけど
おおとりさまに対するささやかな反撃のつもり
しかしずさんだなぁ、
魔法警報装置くらい設置しとけばいいのに
長いこと戦争がなかったのか、平和ボケもいいところだ
ぼくはまた何食わぬ顔でその場を離れた
「おい、どうした! しっかりしろ!」
「おおおおとりさまが……おおとりさまが
おおお俺をアイアンメイデンに……」
「……おい、ターゲットにやられたのか?! おい!」
「ひいいいやあああああああああああああ
や、やめてくれおおとりさま!
俺はクリムゾンバインドにはなりたくない……!」
「おおとりさまがどうしたって?!
あの女が何をし……くそ、イカれちまってる
まさか、女装だとか言って鯛の姿焼きを隠しやがったか!?
おい、おおとりさまを探し出すよう各員に連絡を!」
後方で慌てふためく声がする
小声のつもりなんだろうけど丸聞こえだ
影さんたち、他の人にも聞こえて祝賀会どころじゃなくなるぞー
ああ、案の定騒然とし始めた…… |